当院における創傷治療(なつい式湿潤療法)について

当院における湿潤療法

私が医院を継承してから15年が経ちました。現在に至るまで周囲に整形外科が4件開業、さらには接骨院、整体マッサージ店などの医療類似施設を含むとライバルがとても多く、無床診療を続けている当院は中々特徴が見当たらなくなり、患者数の減少という問題で頭の痛い日々を過ごしておりました。
元来、静岡県は無床診療率が95%と全国で最も高いです。最も無床診率が低いのは熊本県、一般的には西高東低となっており、東海道~山陽沿線では高い傾向となっています。そうした状況の中で、何とか診療面で特徴を出したいと思って始めたのが、「怪我をしたら傷を消毒しない、乾燥させない」といういわゆる湿潤療法の導入です。この治療法を開始して約10年ほど経ちましたが、今では自信をもって取り組めるようになりました。

日本では、1996年に夏井睦先生が創傷被覆材を使った外傷治療を始め、2001年に HP「新しい創傷治療」を開設されたことや、ドラッグストアでキズパワーパッドなどの被覆材も販売されるようになり徐々に世の中に広まっているようにも見えます。
しかしながら、ケガ、やけどに軟膏、ガーゼの処置を受け激痛を訴えて転院してくる患者さんもまだまだおられます。昨年中に出動した地区防災訓練の救護トランクや、静岡マラソンの救護品リストの中にもいわゆる市販の消毒薬などがたくさん用意されておりましたし、学校キャンプの救護に帯同しても保健室の備品は消毒薬のオンパレードであり、まだまだ一般への認知はこれからという印象でした。今でこそ、湿潤治療の書籍や文献はたくさん入手できますが、2003年当時は夏井先生が執筆された一冊しかありませんでしたし、その他には夏井先生やラップ療法の鳥谷部先生のHPだけが頼りでした。
治療開始当初は、拝見する患者さんもみな初めてのケースなので、お互いに相当なストレスを抱えながらのスタートであったと記憶しています。湿潤治療に必要な創傷被覆材も当時は高価な割に小さく使い勝手も悪かったため、ラップを使用したり穴開きポリ袋に紙おむつを挿入したものを手作りしたりと、かなり試行錯誤を繰り返し苦労をしました。
消毒もせず、紙おむつを使用するといった説明をすると患者さんから、怪しまれたり、ラップに浸出液が溜まってしまい、「これは膿んでいるじゃないか!」とお叱りを受け転院されていく方もいらっしゃいました。しかし湿潤治療が普及するにつれ、アルギン酸塩、ポリウレタン、ハイドロコロイドを含有する被覆材もかなり廉価なものが発売されるようになり、便利になってきました。
細々とではありましたが、湿潤治療を継続してくるで、著明改善する症例も増えて参りました。以前に比べると、治療予測についても患者さんに分りやすく説明できるようになったと思います。
遠くは伊豆半島、富士宮、奥大井などから通院してくださっており、中には車で二時間以上もかかる患者さんもおります。幸いなことに、診断、治療に困ったときは、症例の写真をその場でデジカメ撮影し夏井先生のもとに送って相談しており、数時間以内に返事が頂き治療方針のアドバイスをいただけるようになりました。ちょいと自信のない旨を話すと、メールの最後に“大丈夫、嘉本はやれば出来る子だ”と励ましのメッセージも入れてくださいます。

またSNSなどを通じて全国の湿潤治療を行っているドクターとの症例検討なども、盛んになってきました。ここ数年は実際の手技や患者さんに対する説明法などを学ぶべく、当院の夏休みを利用して、夏井睦先生の勤務される“練馬光が丘病院傷の治療センター”にて研修をさせていただいております。
今年の医院の夏休みは、母校静岡高校の野球部の甲子園での応援にあてる予定でした。春の選抜はベスト8まで進み、優勝した敦賀気比高校に敗れており、そのリベンジだ!清宮、オコエもかかって来い、というような静岡高校史上最強説も飛び交いかなり強気な構えでしたが、なんと初戦敗退。という訳で、夏休みは、例年通り、夏井先生のもとでの研修、並びに東医体バスケ(今年は主管校でした)の救護ボランティアに出動となりました。
夏井先生のもとでの、研修終了後は、いつも居酒屋で宴会となります。診療の話に加え、流行りの糖質制限や趣味の音楽の話もお聞きしたりと楽しい時間を過ごさせていただいております。
やけどや指尖部の損傷、また挫創、擦過傷などの治療において、湿潤療法の威力は圧倒的です。また、治療も痛みは無く綺麗に治るので、お子さんにも好評です。
記しましたように、被覆材もかなり廉価なものも発売されるようになりました。
通常診療に加え、災害時などにも、創傷被覆材は非常に有用であると考えられます。是非、これらが各小学校救護所にある、救護トランクの備品(特にアルギン酸塩の止血効果は絶大ですので)に加えられることを提案します。

患者さんからの手紙より

嘉本先生
先生にはお元気にご活躍のことと存じます。
私は三島から火傷の治療をしていただくために通院しておりました、高○内○子の娘でございます。
7月中に一度診察に伺うようにとのことでございましたが、暑さのために体調を崩し、熱中症で8月に入ってから入院してしまいました。やっと先日退院いたしましたが、体力や筋力が落ちてしまい、外出ができる状態ではございません。
誠に申し訳ございませんが、静岡にうかがうことはできそうもないため、メールでご報告させて頂くことをお許しください。
火傷の傷は7月中には綺麗になりました。…初めは濃い紫色だった傷跡の色が、次第に薄くなってまいりました。また、浅い傷はピンク色になり、日毎にピンクの肌が増えてきて、それも目立たない肌色に変わってきております。痒がることもなくスムーズに良くなって、安堵しております。もし従来の皮膚科の治療を受けていたら、さぞかし苦しんだことと存じますが、嘉本先生のお蔭で、最良の治療をしていただき、心から感謝いたしております。
火傷をして引きこもりがちになっていたところに入院があって、心身ともに一度に弱ってしまいました。かもと整形外科医院が近かったなら、これからいろいろとお世話になれたのにと、とても残念です。年寄りはとても怖がりなので、嘉本先生の優しい雰囲気が母は好きだったようです。
先生から治療終了のお墨付きを頂くまで通院できずに本当に申し訳ございません。また、母の体調不良に振り回されて、ご報告がすっかり遅くなりましたこと、お詫び
申し上げます。    丸○ ○子

湿潤治療ってな〜に?

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