湿潤療法

2013-02-21

湿潤療法、だいぶ認知されてきております。

以下【東京新聞】引用(http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2013021902000186.html

 外来のやけどの治療現場で、患部を保湿して皮膚を再生させる湿潤療法が広がっている。軟こうとガーゼによる治療と比べ、痛みや後遺症を大幅に減らせるためだ。従来の治療では皮膚移植に至る症例も、「湿潤療法で治せる場合が多い」と指摘する医師が増えてきている。 (林勝)
 愛知県内の会社員(28)の長女(3つ)は昨秋、夕食中に鍋の熱いスープを誤って左手にかけた。救急病院に行き、患部に軟こうを塗ってガーゼで覆う処置を受けたが、その後も痛みで泣き続けた。母親(28)は、インターネットでやけどの湿潤療法を知り、長女に受けさせたいと思った。
 翌日、やけど治療の実績がある病院の形成外科を受診。ガーゼを患部から引き剥がす時に長女は再び大泣きした。「やけどが深いから皮膚移植が必要かも」と医師。「湿潤療法でお願いします」と訴えたが、返ってきたのは「うちではできません」だった。病院を変えることを決めた。
 名古屋市昭和区の杉浦医院(内科・小児科・在宅医療)で湿潤療法が受けられることを知り、早速受診。森亮太院長は「これならきれいに治る」と、患部に付いた軟こうや水疱(すいほう)の皮をできるだけ除去。体に無害のワセリンと被覆材で患部を保護した。すると長女は、ぴたりと泣きやんだ。
 自宅では毎日、患部を水道水で洗い、ワセリンを塗った新しい被覆材と交換。森さんの指示で、痛みや腫れを伴う感染症に注意しながら続け、皮膚は徐々に再生。やけどから二十四日目には、ほぼ回復した。「湿潤療法を受けさせて良かった」と母親。一方「なぜ、大きな病院でできないのか」と不満をあらわにした。
 杉浦医院にはこの患者のほか、湿潤療法を求めて別の病院の形成外科や皮膚科の治療をやめて来る人が増えている。両科の治療に共通するのは軟こうとガーゼ。「この処置が皮膚の再生を妨げている」と森さんは言う。
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 湿潤療法の普及に努める練馬光が丘病院傷の治療センター(東京)の夏井睦医師は「軟こうの成分と、ガーゼによる乾燥が問題」と指摘する。
 いずれも感染を防ぐのが主な目的だが、軟こうに含まれる殺菌剤や界面活性剤は、皮膚や傷口の細胞を破壊する。ガーゼは空気を通すため、患部を乾燥させて、さらに治癒を遅らせる。激しい痛みは乾燥で起こり、患者に大きなダメージを与えると、夏井さんは考えている。
 こうした治療が行われるのは、日本熱傷学会が標準治療として認めているためだ。夏井さんは「結果的に傷を深くした上で、別の場所の皮膚を剥がして移植をしている。患者は、傷痕や触覚が鈍る後遺症にずっと苦しめられる」と話す。
 一方の湿潤療法のポイントは、患部とくっつかない無害の素材をかぶせ、滲出(しんしゅつ)液をとどめて乾燥を防ぐこと。毎日水洗いして、被覆材を交換すれば、感染症はほとんど防げるという。夏井さんは「治療結果から、患者の生活の質のレベルが違うはずだ」と強調。背中全面に負った重いやけども、湿潤療法で治した実績がある。
 日本熱傷学会に所属する中部地方のある医師も、皮膚移植に至る治療に疑問を感じている。「もし自分の娘がやけどしたら、皮膚移植は受けさせない」と漏らす。
 同学会理事の仲沢弘明・日本大医学部形成外科主任教授は「インフォームドコンセント(十分な説明と同意)なしに、安易に皮膚移植が行われているのであれば大問題。ガイドラインについても検討する必要がある」とコメントした。
 夏井さんは、ホームページ「新しい創傷治療」で、湿潤療法が受けられる全国の医療機関を紹介している。

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